Twitter 始めました

1月30日

Twitter 始めました。主にブログの更新情報、イベントの告知などに利用していきたいと思いますので、宜しくお願いします。

ユーザー名 freedom2p
URL http://twitter.com/freedom2p
                                                (文責:若狭)




  

Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年01月30日16:04

【要約・第5回】 「連載21~最終回分」

1月30日

 医師の養成と増員について、既存の医学部5年生以上に、全国統一試験を課して、合格者には仮免許を支給し、現行の臨床研修制度レベルの研修を在学中に履修させることを提案します。医師の増員については、両極の議論がありますが、医師が増えることで医療の質が低下するという論旨は、こと医療分野においては当てはまらないと考えています。

 医師過剰 → 競争原理が働く=買い手(患者)市場になる → 専門医・総合医の資格(能力)を持た ない医師を患者が選ばない → 医師が資格取得のために技術向上に励む → 医療業界全体の質の向上 → 患者・国にとって有益

 一連の改革は医師個々人にとっては、経済的な面及び生活面ではこれまでより格段に改善されます。しかしながら、こと医療に関する知識や技術の習得については、これまでより積極的な姿勢が求められることになります。それは全ての医師が、診療科別専門医もしくは総合医(家庭医)の資格と能力を持つことを求められることになるからです。
 それにより恩恵をうけるのは、患者であり、ひいて国そのものです。知識や技術を身につけることは、言葉でいうほど簡単なことでないことは医師ならぬ身でも容易に想像がつきます。しかし、このような努力の求められかたは「医は仁術」を標榜する医療関係者の本懐ではないでしょうか。

 「総合医療区域」の創設にかかる費用については、本論では既存の類似施設「神戸医療産業都市構想」を例に、「総合医療区域」の創設に係る費用を仮定する事とします。中核施設の整備等に費やした投資額は、98年から09年度予算までの累計で、神戸市が約249億円、国や独立行政法人などが約1,037億円の合計約1,286億円。単純計算で、年間で約100億円程度を設備投資等の費用として、自治体経費もしくは国からの交付金・補助金等で賄っていた計算になります。
 「総合医療区域」の創設にかかる費用の財源については、国土交通省所管の公共事業費「住宅都市整備環境事業費」などの活用です。
 「住宅都市整備環境事業費」は、総額1兆6,100億円(2008年度)でその内訳は、地方の自主性・裁量性を尊重した地域住宅交付金により地域における多様な需要に対応した公的賃貸住宅の整備等を行う「住宅対策」6,548億円。地方の自主性・裁量性を尊重したまちづくり交付金により都市環境を整備する「都市環境整備事業」に9,553億円を支出しています。 

 「総合医療区域」においては、従来の規制の枠にとらわれない医療サービスに関する情報公開や国際的な人材の活用、診療科別専門医及び総合医(家庭医)の研修制度の確立、医療従事者の職場及び居住環境の整備、医療施設と医療関連産業との共同事業などが可能となります。
 このような「総合医療区域」を地方に10カ所程度配置し、それぞれが高度な医療サービスを提供する医療施設や医師の研修制度をもち、充実した生活及び職場環境を提供することで、医師がそれぞれの適性やキャリアプランを勘案して「総合医療区域」に集まってくることが期待されます。
 そして、各「総合医療区域」が医師の派遣機能を持ち、提案主体となる道府県及び隣県のプライマリ・ケアを担うことで、医師の偏在による医療格差を是正することが可能になるのではないかと考えました。2004年に新臨床医研修制度が導入されたことによって弱体化してしまった大学病院医局の医師派遣機能を、「総合医療区域」が再構築するということです。
 また、「総合医療区域」では、民間の医療関連企業との共同事業を通して地域経済の活性化を図りつつ、さらには、病院は入院、診療所は外来といった病院と診療所の機能分化と連携についても、それを実現するための具体策を本論は提示するものです。

 本論はもともと「生命の洲・日本」構想 ―いのちのしま・にっぽん― という政策の実現フェイズを時系列順に3分割した場合の最初の段階を抜き出したものです。この政策は、安全保障と社会保障という国家政策における基盤ともいうべき二つの保障を医療政策という一つの理念で統合し、日本が「世界平和」の実現に向けて具体策を示すことを最終目的とするものです。
 すなわち、本論で記載した「総合医療区域」の創設により、国内の医療格差の是正をはじめ、医療立国としての基礎を確立する。
 これをフェイズ1として、次に、国内のみならず、海外からも多くの患者・医療関係者が、治療や医学研究のために日本を訪れるという状態を作り出すことを目的とした、各種のインフラ及び法整備とその実現をフェイズ2とする。
 さらに最終段階フェイズ3として、国内での法的認識とは裏腹に諸外国からみれば軍事抑止力そのものたる自衛隊を国内警察力に転嫁し、名実ともに対外戦力(軍事力)の不保持を実現する。

 これは、国内に様々な国の患者・医療関係者が存在し、かつ世界の最先端医療を国全体で実現し、その「医力」により国際貢献をなし得る日本が、「医療抑止力」をもって国家安全保障を成り立たせ、世界に先駆け実質的な軍事力を放棄することで、軍縮と「世界相互依存」の状態を作り出し、世界平和への具体的一歩を世界に向けて示すことに他なりません。

 50年先、100年先の日本が国家として目指す理想を提示し、その理想をただ夢想するのではなく、現実のものとするために、今後とも更なる研究を進め、政策の実現可能性を高めていきたいと考えています。
                                               了(文責:若狹)
  

Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年01月30日09:44

【要約・第4回】 「連載16~20回分」

1月26日

 この政策で期待される副次的な効果は二つあります。それは「地域経済の活性化」と「国際貢献」です。
 「総合医療区域」の創設は、地域の経済を活性化し「総合医療区域」を擁する地方に「人・物・金」を回すことで、将来的な経済的自立を確立するものです。それは、財政的・物理的に自らの地域の実情に合わせた医療を実現することが可能となることを意味し、地域住民の医療の質ひいては生活の質の向上に繋がると考えます。
 また、特区制度を活用し、留学生や海外の医師を積極的に受け入れ、人材育成を通して世界の医療人材供給ハブを目指して、医療レベルの向上と同時に人的協力として、「総合医療区域」から災害地・紛争地に医師団・病院船等を派遣するなどの国際医療協力を行います。

 この政策では、地方であっても医師を自律的に集める魅力を持ちます。
 医師の望む医療施設(勤務先)を調査した結果、医師の希望は大別すると2つの環境の充実に集約されます。すなわち労働環境と生活環境の充実です。生活環境については、前回までの連載で記載した通りです。 労働環境については、以下の2点が重要であり、これらの点をカバーすることが、医師を集約するためのインセンティブになると考えます。

 1.専門医・認定医の資格が取得(キャリアアップ)できる
 「総合医療区域」においては、分野別専門医と、総合医(家庭医)の養成カリキュラムを設置することで、この要望に応えます。

 2.勤務医の労働条件(時間・報酬)
 「総合医療区域」には専門診療分野を持つ専門医やその資格取得希望者及び、総合医(家庭医)資格の取得希望者を中心に多くの医師が集まることが想定されます。医師が集まれば、勤務時間のシェアリングが可能となり、一人当たりの勤務時間は短縮されます。また、「総合医療区域」は経済的にも地域の自立を促進しますので、勤務者の報酬という点でも問題をクリアできます。

 しかしながら、これまで試案として記載した政策により目的の効果を得るためには、「特区・地域再生」制度を適用し、規制緩和措置を利用したとしても、構造的な限界が存在します。

 診療科別専門医、いわゆる専門医については、その認定制度が問題です。
 医師の技量の向上を考えれば、エビデンス(経験)に基づいた一定の統一基準もしくは審査機関の設立が必要不可欠です。そしてそれは、各学会ではなく国が主導で行うべきものであると考えます。

 総合医(家庭医)の養成については、総合医(家庭医)を医療制度のなかで十全に活用するためには、全医師数の半数は総合医(家庭医)である必要があるとの指摘もあります。将来的にこのような人数の総合医(家庭医)を養成するためには、国が主導していくことが必要不可欠です。
 また、総合医(家庭医)の養成にあたっては、以下のように提案します。
 既存の医師に対する認定においては、離島・へき地(医師不足地域)に基準年以上の勤務実績がある場合に総合医(家庭医)として認定する。新規に総合医(家庭医)の専門医資格を取得する場合には、養成カリキュラムを受講(要・実務試験)し、「総合医療区域」が指定する離島・へき地(医師不足地域)の医療施設での一定期間の実務経験を課し、そのうえで総合医(家庭医)として認定する。
 このように設定することで、日本全国の医師不足地域に医師を派遣することが可能となります。2004年(新医師臨床研修制度導入)以前に、大学医局が持っていた人事権を「総合医療区域」を擁する自治体が替わって掌握することで、医局制度のデメリットを排除した上で、そのメリットたる、地域医療への現実的な医師派遣機能のみを発揮することができます。
                                                 (文責:若狹)

  

Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年01月26日23:05

【要約・第3回】 「連載11~15回分」

1月23日

 現状を踏まえて提言する政策が、5つの機能をもつ「総合医療区域(日本版メディカルシティー)」を、近隣の2~3府県が合同で提案主体となり「特区」制度を活用し、日本国内に10カ所程度創設することです。

 1.専門医療分野(例:移植医療、小児科、産科等)と、その専門医養成カリキュラム
 2.総合医(家庭医)養成カリキュラム
 3.研究だけではなく臨床までを一括して行える中核となる医療施設
 4.職住一体をコンセプトに社会・生活インフラが整備された定住都市
 5.介護福祉施設、創薬・医療機器開発研究等の医療周辺産業を集約

 なぜ5つの機能を必要とするのか、それは、医療資源の適切配置と財源確保のためです。1~4の機能は医療資源の適切配置のために、5はその財源確保のために設定するものです。

 「総合医療区域」のイメージを説明するために、北陸地方の福井県、石川県、富山県の3県が主体となり「北陸小児医療区域」を創設したと仮定します。
 この「北陸小児医療区域」は、地域医療の中核施設として、三県とその隣県のプライマリ・ケアをカバーします。「小児医療」の専門診療分野においては、臨床・研究ともに日本で最高の医療を提供することが特色です。そして小児科専門医の養成と総合医(家庭医)の養成を行い、魅力ある都市計画と医療周辺分野の集約により活性化された地域経済は、「北陸小児医療区域」を擁する北陸地方に医療だけではなく、経済の面においても恩恵をもたらすことが期待できます。

 「総合医療区域」の創設により、医療格差の是正つまり、「医師不足問題」の根絶という主効果と、地域経済の活性化(人・物・金を地方へ)、及び国際協力への貢献(人材育成を通して世界の医療人材供給ハブへ)という二つの副次的効果を創出することが期待されます。
 特定地域における様々な規制緩和を可能とし、必要であれば資金調達等も容易に行える「特区・地域再生」制度を利用することで、現行法の改正なく迅速に医療格差の是正を図ります。
                                                (文責:若狹)
  

Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年01月23日17:56

日本の未来を創る「医療による安全保障」

1月20日

 大切な人の命が危機に瀕しています。有効な治療ができるのは北朝鮮の病院のみ。
 こんなことが現実に起こったら、皆さんはどうしますか? 

 金銭、法律、時間・・・・・・様々な問題があるでしょう。でも、私ならあらゆる手段を行使して北朝鮮に行きます。
 少なくない方が、同じ状況になれば私と同様の選択をするのではないでしょうか。「大切な人の命」を守りたいと願う「想い」は、とてもとても強いものです。

 ではもし、その強い「想い」の受け皿に日本がなることができたなら、「大切な人の命」を守る医療を日本が世界に提供できたなら、この国の安全保障すら、医療で成り立たせることが可能になるのです。

 唯一無二の医療、そこまではいかないとしても最高クラスの医療を、国籍・宗教・人種の差別なく提供する医療立国・日本には、世界各国から患者やその家族が集まります。
 そこに居るのは富裕層に属する人達が大半を占めることは容易に想像ができるでしょう。そしてその人達は同時に、各国で政治的決定権を持つ人、もしくはその家族や関係者、または彼らに影響力を持つ人物である可能性が非常に高いのです。
 なぜなら、現実として貧困層に属する人達は政治に対する決定権を持っていないからです。

 当然、貧困層の人達に対しては別途、国家レベルでの医療協力・支援を行う必要があります。そのためのインフラとして病院船やドクタープレインの製造・配置、法整備や人材育成等を推進する必要があります。
 これは経済政策的には単なる出費と思われがちですが、この過程で人材雇用・設備開発などの経済効果も見込め、支援を通じて日本の国際的地位の向上にもつながる、実は費用対効果の高い政策なのです。

 話を戻します。多くの国において国政に影響力を持つ人物は、本人はもちろん、一族郎党・関係者も富裕層に属していることがほとんどです。
 そのような人達が数多く滞在する日本に敵対的行為を仕掛け、医療行為の遂行を侵害することは、複数の国家を敵にまわす自殺行為であり、外交としての戦争の観点からも下策となります。これが「核(軍事)抑止力」に代わる新しい概念「医療抑止力」です。

 現状の日本は在日米軍と自衛隊の軍事力により安全保障が担保されています。現状を鑑みれば、軍備の増強や核武装すら現実的な選択肢として、少なくとも議論の俎上には載せるべきであると思います。安全保障は国の最大の義務であり責務です。万難を排して国を守らなければなりません。

 もし米軍基地を国内から撤廃したいなら、この国は独自で安全保障を成り立たせる必要があります。そのためには現在の兵力・装備を考慮すれば、十全に国を守るためには核武装も現実的な選択になるでしょう。国民の多くがその選択を望むのであれば、それもまた日本という国の目指すべき未来の一つかもしれません。

 しかしながら、その選択を選んだとしても重大な問題が存在します。軍事力による安全保障を維持するためには莫大な予算が必要です。軍事力による抑止効果を得るためには、対外脅威に比して軍備の維持もしくは増強が必ず求められます。
 今後、東アジア地域で対外脅威が治まる方向に行くことはまずありえません。であるならば、膨大な金額を軍事予算として国防費に計上する必要があります。世界的に先進国の経済が低迷している昨今、どのようにすればその予算を確保できるのでしょうか。

 この問題は、日本のみならず世界中の国々で、今後30年の間に深刻かつ重要な問題として、衆目を集めることになると予測しています。
 現在の先進国のほとんどが軍事力によって自国の安全保障を担保することが難しくなります。「軍事力に頼らない安全保障の確立」、それが30年後の世界では最も大きな政策課題となっているでしょう。
 これができなければ、行きつく先は北朝鮮の「先軍政治」です。経済事情からすれば、日本は他の国に先駆けてこの問題に直面することになるのは確実です。

 この未来を見据えて「医療による安全保障の確立」を提言し、その政策を「生命の洲・日本」(いのちのしま・にっぽん)構想と命名し、実現段階を3段階に区切り、フェィズ1として論文『医療格差の是正-「総合医療区域」の創設-』を上梓しました。
                                                 (文責:若狹)
  

Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年01月20日23:50

【要約・第2回】 「連載6~10回分」

1月19日

 2009年度補正予算で「地域医療再生基金」として3,100億円が計上されました。これは、救急医療の確保、地域の医師確保をはじめとした地域医療の課題を解決するために都道府県の取り組みを援助する基金ですが、実態は国が各都道府県にお金のみを渡して、具体策は各自治体に丸投げしました。
 また2009年8月30日の総選挙により、民主党が政権与党となりました。これにより、今しばらくの間は官僚機構の掌握に時間が必要とされ、医療政策をはじめ各種抜本的見直しの必要な政策の実行・実現は更なる先送りが予想されます。
 
 この点について、「構造改革特区制度(特区)」と「地域再生制度」という、国の制度を利用することで、現行法の改正なく、より迅速に対応策を実現する方策を提言します。
 特区制度は、自治体や民間事業者等の自発的な立案に基づいて、特定の地域に限定して規制の緩和・撤廃を特例として認め、その地域の構造改革を進める制度です。
 全国的な規制緩和・構造改革が困難であり、難航している現状に対して、特定地域において規制の緩和・撤廃を通して、改革の実績と経験を積むことで、将来的には全国的な構造改革へとつなげていく意図があります。そして構造改革の最終目的は「日本経済の活性化」です。
 地域再生制度は、財政支援や税制上のインセンティブを導入するなどして、地域の活性化を図る制度です。

 特区制度のなかで医療分野に関係するものとしては、神戸市が行っている「神戸医療産業都市構想」があります。
 この「神戸医療産業都市構想」は分野こそ医療特区に区分けされてはいますが、実質的には神戸市による経済活性振興策です。将来的には臨床までを視野に入れた計画ではありますが、インフラを整備して、地元の医療系ベンチャー企業の育成・起業支援や先端医療機器の開発研究等、医療周辺分野におけるビジネスを集約することで経済効果を得ることを、主な目的としています。

 医療は医師法・医療法により、通常の営利業界(会社)であれば当然許されることであっても、公共性を保持するという概念から多くの規制が存在します。それは、場合によっては患者だけではなく、日本の医療全体の損失となり得るものもあると考えます。
 例として、医療法では患者が医療機関の広告に過剰に影響を受ける恐れがあるとして、広告の許されている範囲が非常に限定されていることが挙げられます。
 また医師法では、外国人の医師が日本で診療行為を行うためには、日本の医師免許の取得が原則ですが、これは非常にハードルが高いのです。
 一例として挙げた医師法・医療法関連の問題について、最初は地域限定的にですが迅速に改善できる可能性があります。そして、経済的側面からも特区制度の活用は重要です。国の一般会計(2008年度)の歳出総額約83兆円のうち、医療費は8.5兆円と10%を占めています。この額の多少についての議論は本旨ではないので省きますが、医療において、財源ひいては経済的な問題は切っても切れないものであると思います。
 そのうえで、現状よりも医療サービスの向上を図るのであれば、一部の例外的な事情を除けば、財源となる資金の確保が必要となります。問題は、どのような方法でその資金をねん出するかです。特に地方自治体においては国からの交付金以外に、この資金を確保することは切実な問題です。
                                                (文責:若狹)
  

Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年01月19日16:58

【要約・第1回】 「連載1~5回分」

1月16日

 この論文は、地方で医師・病院が不足しているという、いわゆる「医師不足問題」を解決することを目的としています。
 
 では、「医師不足問題」はいつ始まったのでしょうか。2004年に導入された「新医師臨床研修制度」が引き金になって、地方の医師不足はマスコミ等に取り上げられ、多くの国民がこの問題を知ることになりました。

 「新医師臨床研修制度」とは、従来、強制力のなかった新人医師の臨床研修が義務化された制度です。 医師の研修制度は1946年以降、度々変更されましたが、「新医師臨床研修制度」の導入で、それまでの所属する大学病院以外に、一般の民間病院においても研修が可能となり、研修医は大学の医局(簡単に言うとゼミ)に属することなく自由に選択して研修を受けることができるようになりました。
 これにより、それまで研修医を労働力として常に一定数確保していた都市部の大学病院の医局は、地方・へき地の病院に派遣していた医師をその穴埋めに引き上げざるを得なくなるという事態に直面したのです。
 
 この「医師不足問題」を解決するために、「総合医療区域(日本版メディカルシティー)」を創設することを提言します。
 一つの診療科目、例えば、小児医療や産科医療、移植医療等に限定した専門医療分野と、その専門医を養成するカリキュラム。初期医療(プライマリ・ケア)を担う、総合医(家庭医)を養成するカリキュラム。臨床だけではなく研究・教育を一括して行える中核となる医療施設。定住都市としての魅力を備え、医療周辺分野(製薬・医療機器、介護・福祉)を集約できるインフラ。
 これらの機能を持った市街規模の医療施設群「総合医療区域(日本版メディカルシティー)」を日本各地に(地方に10か所程度)創設し、「医師不足問題」の根絶を含む3つの効果を創出します。

 1.医師不足問題の根絶(医師不足・偏在の解消と医療の質の向上)
 2.地域経済の活性化(人・物・金を地方へ)
 3.国際協力への貢献(人材育成を通して世界の医療人材供給ハブへ)

 現状、特に過酷な労働環境に置かれているのは、年代別では若手医師、地域別では東北地方・中国地方、診療科別では、産婦人科・小児科です。
 「医師不足問題」について、2007年4月に厚生労働省は、医師数全体は将来的に均衡する見込みであるという従来からの見方を変更しませんでしたが、現在、産科・小児科といった診療科における偏在があることは認めました。
                                                 (文責:若狹)

  

Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年01月16日09:37

【補講・あとがきにかえて】 

1月13日

 25回にわたり連載致しました「論文簡略版」ですが、その元になっているのは平成22年3月に筆者が修士(国際医療協力)の学位認定を受けた論文になります。そのため、使用しているデータや制度等は主に平成21年末までのものが主流を占めています。

 当然のことですが、当時とは変化している点がいくつかあります。
 特に執筆中には、個人的な構想・政策案や未来予測でしかなかったことが、現実に動き出していることを今回の連載中に頂いたコメントで知ることができたのは、大きな喜びでした。

 医療は遅行指数の最たるものですので、改善や改革などで成果を実感するには年単位が必要になることも珍しくありません。一例を挙げれば、医学部教育を抜本的に改革したとして、その成果が得られるには10年程度の時間を要します。それは新しい制度で育成された医師が一人前になるためにその時間が必要だからです。

 医療政策は常に未来を見据えなければなりません。それは場合によっては、現在の時点ではデメリットが多いと思えることでも、必要であれば取り組む決断をする勇気が求められることを意味しています。即物的な金銭の大小や対症療法的思考ではなく、根治療法を目指し、描く理想を実現するために、中長期的視野での政策立案に今後とも取り組んで参りたいと思います。
                                                (文責:若狹)

【お知らせ】
次回からは5回程度に分けて、連載した論文の要約を掲載致します。
  

Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年01月13日21:56

【連載・最終回】 国家100年の計

1月9日

 「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。(中略)われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」

 1946年11月3日に公布された日本国憲法前文の一節です。

 これは日本国民が国際平和という理想を実現するために全力を尽くすことを宣誓したものです。果たして現在、日本は、政府は、国民は、この「崇高な理想」を達成する意志が本当にあるのでしょうか。そして、その意志があったとしても、その理想を達成するための具体策を持っているのでしょうか。

 本論はもともと「生命の洲・日本」構想 ―いのちのしま・にっぽん― という政策の実現フェイズを時系列順に3分割した場合の最初の段階を抜き出したものです。この政策は、安全保障と社会保障という国家政策における基盤ともいうべき二つの保障を医療政策という一つの理念で統合し、日本が「世界平和」の実現に向けて具体策を示すことを最終目的とするものです。

 すなわち、本論で記載した「総合医療区域」の創設により、国内の医療格差の是正をはじめ、医療立国としての基礎を確立する。
 これをフェイズ1として、次に、国内のみならず、海外からも多くの患者・医療関係者が、治療や医学研究のために日本を訪れるという状態を作り出すことを目的とした、各種のインフラ及び法整備とその実現をフェイズ2とする。
 さらに最終段階フェイズ3として、国内での法的認識とは裏腹に諸外国からみれば軍事抑止力そのものたる自衛隊を国内警察力に転嫁し、名実ともに対外戦力(軍事力)の不保持を実現する。
 これは、国内に様々な国の患者・医療関係者が存在し、かつ世界の最先端医療を国全体で実現し、その「医力」により国際貢献をなし得る日本が、「医療抑止力」をもって国家安全保障を成り立たせ、世界に先駆け実質的な軍事力を放棄することで、軍縮と「世界相互依存」の状態を作り出し、世界平和への具体的一歩を世界に向けて示すことに他なりません。

 以上をもって日本は、憲法前文に謳われている「崇高な理想」を達成することを目指す、50年先、100年先を見据えた国家100年の計というべき政策です。

 このように本論は、この政策構想のフェイズ1に相当する部分です。今後は、政策の理念に賛同いただける方たちと共同して実務的な研究を行うべきであると考えるし、また実際に、そのような方々と協同して、内容の更なるブラッシュアップと、国会議員・官僚への政策提言や、本政策の一般への周知のためのリーフレット・書籍の出版、任意団体の設立、シンポジウム・勉強会等の準備も動き出しています。

 既存の構想とか戦略とかいわれるものは、ビジョンや理想だけを声高に語り、そこに実現に向けた具体策は全くと言って伴っていないのが現状です。
 この研究は、残された課題や検討事項が多く、現時点では実現可能性という点について疑問符が付くでしょう。しかし、長らくこの国を覆う閉塞感は、国民全体の将来に対する不安と、国が将来の国家像を示すことができていないことにその原因があると考えています。
 50年先、100年先の日本が国家として目指す理想を提示し、その理想をただ夢想するのではなく、現実のものとするために、今後とも更なる研究を進め、政策の実現可能性を高めていきたいと考えています。
                                                了(文責:若狹)
  

Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年01月09日19:47

【連載・第24回】 本論の特徴と限界について

1月5日

 本論では、医師の偏在による医療格差を是正するために、「特区・地域再生」制度を活用し、「総合医療区域」を創設することを提案しました。そして、それによって期待される効果と限界について述べました。

 「総合医療区域」においては、従来の規制の枠にとらわれない医療サービスに関する情報公開や国際的な人材の活用、診療科別専門医及び総合医(家庭医)の研修制度の確立、医療従事者の職場及び居住環境の整備、医療施設と医療関連産業との共同事業などが可能となります。

 このような「総合医療区域」を地方に10カ所程度配置し、それぞれが高度な医療サービスを提供する医療施設や医師の研修制度をもち、充実した生活及び職場環境を提供することで、医師がそれぞれの適性やキャリアプランを勘案して「総合医療区域」に集まってくることが期待されます。
 そして、各「総合医療区域」が医師の派遣機能を持ち、提案主体となる道府県及び隣県のプライマリ・ケアを担うことで、医師の偏在による医療格差を是正することが可能になるのではないかと考えました。
 2004年に新臨床医研修制度が導入されたことによって弱体化してしまった大学病院医局の医師派遣機能を、「総合医療区域」が再構築するということです。

 また、「総合医療区域」では、民間の医療関連企業との共同事業を通して地域経済の活性化を図りつつ、さらには、病院は入院、診療所は外来といった病院と診療所の機能分化と連携についても、それを実現するための具体策を本論は提示するものです。

 この「総合医療区域」を創設するという試案を実施するにあたり、具体的な創設場所、街区の面積、専門とする診療科目の選定、財源やその規模など、まだ不確定な部分があります。
 これらについては、まず医師が不足していて十分な医療を受けられていないと考えられる地方から一つの地域を選定し「総合医療区域」を創設します。その際、本研究では利用できませんでしたが、年齢調整をした受療率を経年的に求めるなどして、医療格差についてより客観的に把握することが必要です。
 また専門とする診療科目の選定については、その地域で、その診療科目を専門とする理由もしくはメリットが、日本の他の地域に比して存在するのか、同時にその地域に創設した場合の経済的採算性も含めて十分考慮しなければなりません。そして、そこでの経験をもとに他の候補地に適応していくことが順当であると考えます。

 本論では、医師の偏在による医療格差を是正するために「総合医療区域」の創設を取り上げました。本論では触れることはできませんでしたが、これまでも医師の偏在を解消するための試みは各都道府県や二次医療圏で行われており、これらの効果と問題点を整理することは医師偏在の解消策を検討する上で重要であると考えます。
 その他、遠隔医療の可能性、診療報酬のあり方、医師とコメディカルの役割の見直しなども医療格差を是正する上で検討すべき点であると思われます。これらは主として供給者側の課題ですが、救急医療を中心とした患者の適切な受診のあり方は、医療格差に是正のための需要者側の重要な課題です。

 今後はこれらの点もふまえつつ、「総合医療区域」の実現可能性を検討する必要があると考えています。
                                                (文責:若狹)

  

Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年01月05日14:58

【連載・第23回】 本政策の実行可能性に関する検討(2)

1月2日

 自治体財政について
 「総合医療区域」の運営主体となるのは自治体(都道府県)です。自治体運営の基本財源の歳入と構成比は以下の通りです。(2005年度)
 
 自主財源としては地方税35.2%、その他(使用料、諸収入)17%、依存財源としては地方譲与税1.8%、地方特例交付金1.8%、地方交付税18.9%、国庫支出金13.5%、地方債11.7%その他0.1%であり、依存財源とは国の財源保証、いわゆる国からの仕送りです。
 
 このうち国庫支出金は、特定の行政目的を達成するために自治体からの申請を基に、当該経費に充てることを条件に国から交付される予算であり、これを「総合医療区域」の創設に係る費用の財源とすることで、逼迫している地方自治体の財政状況においても「総合医療区域」を創設することが可能となります。具体的には、前回の「地方再生」制度交付金及び国土交通省所管の公共事業費がそれに該当します。

 財政面における実現可能性について
 年間に約100億円の予算を用意できれば、財政面では「総合医療区域」の実現は不可能ではないと思われます。そして、その金額は地方自治体に財政負担を強いることなく、現在支出しているベースで紹介した交付金・補助金を付け替えるだけで特別の処理を必要としません。仮定の必要予算であるので、金額の精度に問題はありますが現時点で詳細な金額を弾き出すことは非常に困難です。今後はこの点につき、少しでも精度を高めることが重要であると認識しています。

 ロジックモデルにおける検討
 ロジックモデルとは、政策がその目的を達成するに至るまでの論理的な因果関係を明示し、政策に関係する計画立案者、実施者、受益者等で意見を交換し、政策の効果を高め、改善するためのツールです。
 
 ロジックモデルに使用している用語について、「資源」とは、人的、財政的、情報・組織的な資源、及び地域の資源で、政策の実現に向けて投入するものです。「活動」とは、資源を利用して行う政策であり、ここでいう活動とはプロセス、ツール、イベント、技術、及び行動を含み、政策実施の意図的な部分であり、これにより成果を生み出すことになります。「結果」とは、政策における活動の直接の産物で、その政策で実現する現状及び、提供するサービスの内容等が含まれます。「成果」とは、ステークホルダーの行動、知識、技能、立場、及び機能レベルにおける特定の変化です。短期成果は1~5年以内、中長期成果は5~10年を想定しています。

 政策を実施してどのような成果を期待するのかを明示し、達成状況を測定する方法を探すことは、すべての関係者にとって今後の針路が明確になります。明確な指針があれば、関係者は当然自分の役割に自信を持って活発な行動ができ、針路からそれる可能性も低くなります。ロジックモデルは、特に視覚的な説明に基づいて分析が可能であるので、様々な価値観を持ち、専門の異なる多様な関係者とのコミュニケーションに役立つツールです。これを用いて、政策の理論的構造を示しました (図参照)。
 
 

 本論の目的は、ロジックモデルに記載した短期及び中長期成果の状態を作り出すことです。このロジックモデルを活用し今後とも様々な関係者と検討を行い、政策の実現可能性を高めていくことが重要であると考えています。
                                                 (文責:若狹)
  

Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年01月02日10:00

謹賀新年

1月1日

 謹んで新年のお喜びを申し上げます。

 旧年中は多くの方々に大変お世話になりました。

 会の立ち上げ、パンフレットの作成、ブログの運営、そしてオープンミーティング。
 すべてがメンバーだけでは困難なことであり、ご協力・ご参加頂いた皆様のお力添えの賜物であると感謝致しております。

 今年の当会は、結果を強く求めて活動に邁進致します。

 4月には統一地方選もございます。年初より地方発で、改革の気運が盛り上がるのではないかと予感してなりません。

 医療政策に関しては、患者視点のボトムアップは当然必要として、さらに広い視野でのトップダウンも同時に必要とされる難しい分野であると認識しております。

 今後も「患者・医療関係者、双方の視点から医療政策を提言し、日本の未来に光を照らす」という、当会設立の本旨を貫いて参ります。何卒、今後とも宜しくお願い申し上げます。

 また文末になりましたが、皆様には幸多き年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。

   Freedom to Patients
~患者視点の医療政策を考える会~
     メンバー 一同
  

Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年01月01日00:01