患者の声 「理想の医療、理想の医師、理想の病院」



「理想の医療、理想の医師、理想の病院」をテーマに、医療に関するご意見を集約します。

 頂いたご意見は、この場で定期的にまとめてご紹介し、実際の政策提言作成に反映させますので、Comment(コメント)より是非、皆さまの体験談や理想の医療についてご意見をお寄せください。 

------これまでに頂いたご意見(6月9日更新)

 メタボ対策に費用をかける前に、難病対策に費用をかけるべき、優先順位が間違っている。


 透析患者が高齢になると、入居を断られるケースが多々ある。


 透析患者は全国30万人、都内には3万人いるが、患者会に所属している人は4,000人弱で、高齢化が非常に進んでいる。


 医療従事者は、患者の病気のみを診て、患者の生活は見ていない。


 日本の患者は、医療行為について他の方法があるのか医師に聴けない環境が出来上がっている。


 日本の医療には、患者に医療行為(方法)の選択肢はない。


 病院で死んでも誰も疑問に思わないが、不審死はとても多い、特に精神病院。


 精神病院は医師・経営者同士の繋がりがあり、治療方針に疑問があっても転院がほとんどできない。


 都内のある精神病院では精神科医一人が90人の患者の主治医になっている。


 腎臓移植の国内での平均待機期間は16年(欧米の平均は3年)。


 看護教育の段階で理想とされる医療行為が、現場では実現できない。病院は診療報酬を得ることに腐心し、患者を癒す行為よりも保険点数の獲得できる医療行為を優先している。


 人工透析の標準的な指標とされる、「週3日・4時間」に実は根拠はない。現在は在宅透析(全国で300人位)を推進する医院が少しづつであるが増えている。


 ストレスを緩和するための病院づくりの必要性。たとえば待合室や病院の空調設備等、考え実行する余地は現行制度上でもある。気づいていない、気づいていてもマンパワー不足等で実現ができない。


 現状の精神病治療は問題点が多い。マンパワー不足からくる画一的な投薬治療による、薬物過剰摂取状態の患者。人権を無視した対応等、ひどいものがある。


 患者側、医療機関側、双方にストレス過多。メンタルヘルスを導入したり、専門職としてのMSWの普及などで、万病のもとであるストレスを緩和していかないといけない。


 高額な医療を提供するだけが、良い医療ではない。費用対効果、エビデンス、QOL等、考慮して選択されたものが最良の医療になる。


 地域医療は地域住民との相互協力と理解がなければ、成り立たない。患者側と医療機関側、お互いの思いを知る機会が必要だ。


 有効的な人工呼吸と心臓マッサージの回数についてなど、救急(医療)の現場での実践と、国民に広く伝わっている情報とでは数十年位の遅れがある。


 地方(徳島県)では、症例が少なすぎて研修医を育てることも、研修後、経験を積み一流の技術を身につけることも難しい。地元ではなく東京に医療資源が集中するのはある意味で当然だ。


 休日診療を受けられる病院が地域に少ない。特に小児科。そして、重要なのは病院がどこにあるのかだけではなく、その病院が信用できるのかかどうか。


 皆保険制度は途上国のように、年々経済成長と人口の増加が見込まれるモデルにおいてのみ成立するもの。日本のような少子高齢化を迎えた国にはもはやそぐわない。


 国内の医療問題は制度疲労が原因。新しくゼロベースで構築し直すべき。


 海外の優秀な医師が日本で医療行為を行えないのは国民にとって大きな損失。医療免許の国際化をするべき。


 「脳脊髄液減少症」は潜在患者が10万人といわれ、交通事故や学校での事故(鉄棒から落ちた・ボールがぶつかった等)で発症する場合が多く、大変身近な病気です。ですが、診断基準が確定されていない為、的確な診断および治療ができる医療機関は、かなり限定されています。
 どんなにつらくとも「気のせい」「病気ではない」と診断され、あるお医者さんには、座っていられないのに、 「明日から仕事に行けます。これぐらいの状態なら、皆さん仕事をされていますよ」と、怠け病のように言われたこともあり、 7ヶ月間泣いて訴えても、詐欺のような目でしか診てもらえなかった・・ まるで自分がうそをついているようで、非常に苦しかった・・
 国に認められていない病気ですので病院側の体制も難しいとはおもいます。ですが、せめて医療関係の方だけでも周知徹底していただき、そしてこの病気に限らず患者側に寄り添う医療であってほしいと願います・・。


 病弱で福祉の仕事をしている私ですが
 医者や医療の常識といつも、戦っております!


 人間ドッグはかなり高額であると思います。
 基本の他、オプションである種々の検査、例えば脳ドックや肺がん検査などもかなりの高額料金設定です。
 予防医療を唱えるのであれば、庶民でも定期的に受けることができる金額であればと思いますし、市町村から補助金が出るといいましても、総額するとそれでもまだまだ躊躇してしまう金額です。 
 財政面など、問題も多いと思いますが、私たち若い世代にとっても、老齢になっていく親世代にとっても身近である医療であればと願います。


 私は体が弱く、度々病院へ行くことがあります。
 その中で感じることは、医師や看護師の言葉遣い・対応がおかしいという点です。
 病院であっても、顧客(患者)に対するサービスで言えば企業となんら変わらないのではないでしょうか。高齢者へは赤ちゃん言葉で、尊敬の意が感じられません。
 また、診察を大幅に待たされても「お待たせしてすみません」の一言もありません。
 徹底した人材の育成を病院内で行うべきであると思います。


Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年02月26日21:29

医薬品業界の完全非営利化 「医療」から「癒療」へ

2月25日

 医療は本当の意味で「非営利」といえるのだろうか。経済的な理由で適切な医療を受けられない人が存在する時点で、「非営利」という大義名分は破綻しているのではないか。では、その原因は何にあるのか。
 多くの国において狭義の意味の「医療」、医療技術者による診療行為については「非営利」が原則です。では広義の意味で「医療」に加わる「薬」はどうでしょうか。世界すべてで「営利」です。
 では、ここが「非営利」となれば、医療は狭義の意味でも広義の意味でも「非営利」となり、経済的な理由で適切な医療を受けられない人は存在しなくなるのではないか。

 仮に日本一国で、医薬品業界の非営利化を行ってもそれは実行力を持ちません。少なくとも国連加盟国全体で、統一して行われなければ意味をなさないのです。その理由の一つは特許制度にあります。
 医薬品の多くは先進国の特許によって守られており、開発途上国がこの特許使用料を払って薬を作ることは困難で、まして研究開発を行い創薬を行うことは不可能と言ってよいでしょう。
 製薬会社では安価な薬も提供していますが、肝心の輸入国政府が高い関税や税金をかけるため、一般人には購入不可能な値段になってしまいます。そして、国際援助等のボランティアで薬を受け取った人々は、処方された薬を日々の糧を得るために売ってしまう。結果、本当に必要としている人々の手に、薬は届かない。これが現実です。

 経済原理が行動を支配する営利企業が医薬品を製造・販売している以上、これは避けようがありません。なぜなら、誰も法を犯しているわけではないからです。それぞれがそれぞれの事情で行動した結果なのです。これを抜本的に改善するためには、医薬品業界を非営利化する以外に方法はありません。

 限定的な例になりますがアメリカに1社、非営利の製薬企業が存在します。インスティテュート・フォー・ワンワールド・ヘルス(http://www.oneworldhealth.org/)です。この会社はインドで感染症治療薬を提供しています。そして注目すべきは、この会社が最も気をつけているのは、既存の営利製薬企業との対立だということです。かれらが主戦場としないいわゆる「ニッチ」な分野で活動することで、良い関係を維持することに腐心しています。このことからわかるのは、いかに医薬品業界が強大であるかです。現実問題として、1社や1国で立ち向かえる相手ではないのです。

 そして、もうひとつの理由が、製造コストつまり薬の研究開発費です。厚生労働省の医薬品産業ビジョンによると、新薬の候補化合物でみた成功確率はわずか1万1300分の1(0.009%)、一品目を市場に出すために費やす開発費は260億円から360億円、必要な期間は11年から12年となっています。

 このような費用と期間をどのように賄うのか、それは拠出金制度が妥当です。例えば「世界医薬品機構」を創設し、国連の維持費のように、加盟各国が国力に合わせて拠出を行い、必要な経費を分担することです。
 これにより知識を集約し創薬の成功確率を高め、特許を開放・廃止することで、その成果をはじめて貧富の格差に関わらず提供することができ、必要としている人に「薬」の恩恵をもたらすことが可能となります。

 経済的な視点で見れば、医薬品業界の世界市場規模は約88兆円(2010年度)です。この産業を世界同時に完全に非営利化するというのだから、困難を通りこして不可能であると考える人がほとんどでしょう。これは市場規模が約20兆円(2009年度)の医療機器業界についても同様です。
 しかし、この理想が実現できたときに、医療は本当の意味で「非営利」となります。そして、専門能力(技術・特許・財力)を持った医療関係者が施しの治療をする「医療」から、癒しの心を持つ者の皆による治療、「癒療」へと変わっていくでしょう。
                                                 (文責:若狹)


Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年02月25日13:38

【書籍紹介 第5回】『先端医療のしくみと治療法がわかる本』

2月24日

『先端医療のしくみと治療法がわかる本』

 先端医療について、各々写真や画像を豊富に使用して解説しています。実際に診療を受けられる病院リストも付いており、該当する疾患を抱えている方や、その関係者にはやさしいつくりです。
 また、医療情報の収集に適したホームページや雑誌の紹介、「高額療養費制度」「ドラッグラグ・デバイスラグ」等の、先端医療に関係する制度や問題などについても言及しています。

 特に「混合診療」については、実際の運用例を挙げて随所で紹介しています。議論の分かれる制度ですが、決してあいまいなまま、放置できる問題ではないことに改めて気付かされました。

  <目次>
 PART0 先端医療のしくみと現状
 PART1 がんの最新治療
 PART2 心疾患・脳血管疾患の最新治療
 PART3 生活習慣病の最新治療
 PART4 中高年層に多い疾患の最新治療
 PART5 先端医療をめぐる制度を理解して活用する
 PART6 最新がん検診
                                                 (文責:若狹)
先端医療のしくみと治療法がわかる本 (洋泉社MOOK)


Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年02月24日16:12

フィリピンの医療事情と、その情報の価値

2月18日


 フィリピンで大学病院を3つ経営するオーナー一族の一人で、政府の医療政策にも関わっており、現在は自身が経営する医療施設で国際的な看護師の育成を通して、メディカルツーリズムを実現すべく精力的に活動されている、MR.RICHARD A. MORAN(デック)氏と昨年に続き、情報交換を行いましたので、ご報告致します。

 今回は、日本ではあまり報道されない、現地の実情について興味深いお話がありました。
 
 まずは、臓器移植についてです。ご存知の通り、WHOの勧告により国外での移植が自粛ムードになっている日本ですが、フィリピンでは健常者の臓器売買、特に腎臓及び肝臓については、システムが確立しており、そのほとんどが海外からメディカルツーリズムでやってくるレシピエントに提供されているそうです。
 事の是非は別にして、日本でも古くは売血が公然と行われていた時期があります。その当時の日本と同じ感覚で行われているようです。

 次は、病院による慈善事業についてです。これは氏が経営に携わっている医療施設に限定された話ではなく、キリスト教の精神に則って恒常的に行われているそうです。自画自賛はどの国でも美徳ではありませんので、表立った情報開示(宣伝)はしていませんが、国内の貧民救済に少なくない資金と労力を費やしています。
 メディカルツーリズムに対応した医療施設は、経済性を最優先して、弱者切り捨ての医療だというイメージを持っている方は、少なからずいるのではないでしょうか。

 今回の情報交換で感じたことは、他人や他国による営利のフィルターが掛かっていない、生の情報を得ることの困難さと、それを得ることの重要性です。
 現代社会において情報の重要性は、改めて語る必要もないでしょう。私たちは今後とも、できる限り生の情報をもとに政策を作成し、活動に生かしていきたいと思います。
                                                 (文責:若狹)
 

Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年02月19日02:16

【書籍紹介 第4回】『「改革」のための医療経済学』

2月17日

『「改革」のための医療経済学』
 兪 炳匡 (著)

 タイトルだけですと難しい研究書のようなイメージですが、データを多用し平易な文体で書かれているので、初学者にも非常に理解しやすい良書です。
 
 医療経済学の視点から、医療制度の改革に必要不可欠な論点を明示しています。特に「医療費の削減に効果的な方策は何か?」という観点に興味を持たれている方には、強くお勧めします。

 私自身、論文作成中に拝読し、医療費の削減策における予防医療が与えるインパクト(効果)については、勉強させて頂きました。

  <目次>
 1章 忙しい読者のための総括
 2章 比較による医療の相対的な位置付け
 3章 医療経済学に何ができるのか
 4章 医療費高騰の犯人探し
 5章 改革へのロードマップ
                                                 (文責:若狹)
「改革」のための医療経済学


Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年02月17日22:57

【書籍紹介 第3回】『「病院」がトヨタを超える日(略) 』

2月11日

『「病院」がトヨタを超える日 医療は日本を救う輸出産業になる! 』
 北原 茂実 (著)

 内容を一言で表現するならば、「未来を見据えた活動」というフレーズがふさわしい。
 著者は自身が理事長を務める医療機関で、入院患者家族の院内業務への参加、地域通貨「はびるす」の発行、駅ビル内での「ワンコインドック」等、他に類を見ない方策を実行しています。
 また対外的にもカンボジアの医療を立て直すべく奮闘もされています。
 それらは全て、国内の医療(費)崩壊を食い止めるための具体策であり、医療による外交の可能性を示すものです。

 私たちは「医療による安全保障」を提言していますが、その具体策の一つをご教授頂いたように思います。

  <目次>
 序章  医療は日本最大の成長産業だ
 第1章 八王子から始まる医療立国プロジェクト
 第2章 国民皆保険幻想を捨てよう
 第3章 医療がこれから日本の基幹産業になる
 第4章 日本人だけが知らない世界の医療産業の実態
 第5章 日本医療を輸出産業に育てる方法
 終章  医療崩壊こそ大チャンス
                                                (文責:若狹)
「病院」がトヨタを超える日 医療は日本を救う輸出産業になる! (講談社プラスアルファ新書)


Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年02月11日11:08

【書籍紹介 第2回】『オムツがとれない日本の医療』

2月5日

 『オムツがとれない日本の医療 現役医師が政治家になった理由』
  土田ひろかず (著), やくみつる (イラスト)

 著者が、医師で参議院議員(民主党・1期)ということもあり、医療現場の実情を紹介するだけに止まらず、改善策も提言している名著です。
 特に巻末のマニフェストは一読の価値があります。内容はタイトルの通り、医療界が厚生労働省による官僚統制のもとで、まったく自立できていない現状を解説しています。

 マニフェストの一部を抜粋してご紹介いたします。
6.専門医ばかりになっている医療制度を改め、6年程度で全ての診療科目を広く浅く研修できるホームドクター制度を創設し、医療の効率化、緊急患者のタライ回しの改善、出産のサポートを行います。各医師会・保健所の協力を得て市町村の枠を超えて、人口50万~100万人の広域で、病診連携をベースにして、得意分野を機能分担する医療機関を設け、地域医療の再生を目指します。

 <目次>
 第1章 病院から医師がいなくなる?
 第2章 病院のベッドは勝手に増やせない
 第3章 夜逃げする歯科医
 第4章 医療事故はなぜ起こる
 第5章 看護師不足を加速させる看護体制と社会保障
 第6章 「医療」から「医業」へ
 第7章 「白い巨塔」の今昔
 第8章 医師・病院との付き合い方
 特別対談 土田ひろかず×やくみつる
                                                (文責:若狹)
オムツがとれない日本の医療 現役医師が政治家になった理由


Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年02月05日04:37

政策提言

【10年で医師不足地域を根絶する具体策】(随時改稿)
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Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年02月03日21:53

【書籍紹介 第1回】『なぜ、病院が大赤字になり(略)』

2月2日

 『なぜ、病院が大赤字になり、医師たちは疲れ果ててしまうのか!?―医療をつくり変える33の方法』
 本田 宏 (監修), 「日本の医療を守る市民の会」 (編集)

 33の医療トピックに、それぞれ医療関係者、ジャーナリスト、市民団体の主宰者などの執筆者が、様々な提言を行っています。
 この本の特徴は、非常に分かりやすく日本の医療問題を解説していることです。予備知識がほとんど無くても、理解ができるように編集されているので、日本の医療問題の概略を知るにはお勧めです。
 さらに、マスコミ等では余り取り上げませんが、今後の日本の医療を考える上で、決して外せない重要な問題についても触れていますので、簡単にご紹介します。

 ・医療崩壊の2つのシナリオ-医療訴訟の乱発と「医療賠償責任保険」の破たん
  上 昌広(東京大学医科学研究所特任准教授)
 医療訴訟が増加しているという報道は、最近増えたように思います。ですが、その結果なにが起こるのかまで、きちんと伝えているものは数少ないのではないでしょうか。
 執筆者の上先生は、訴訟の増加に伴い、危険性の高い手術や出産などハイリスクを伴う手技を行う医師が加入する、民間の「医陪責保険」が将来的に破たんする恐れがあると指摘しています。

 ・家庭医の養成を国家的なプロジェクトに
  伸 偉秀(関町内科クリニック医師)
 伸先生は、理想の理療体制を、普段は何でも相談できる診療所、悪化したら病院、夜間の緊急時には救急救命室という、3本立てとしたうえで、現在はこのような体制が整っていないとしています。
 その原因として診療所の医師の能力不足があり、改善のためには開業の前に「家庭医」としての訓練を制度化すべきだと提言されています。

 <目次>
 第1章 いま、医療の現場で何が起こっているのか
 第2章 日本の公的医療保険制度はどこが歪んでいるのか?
 第3章 お金の問題を通して医療の問題を考える
 第4章 患者と医療従事者が信頼関係を築くために
 第5章 安心して医療を受けられる社会にするために市民は何をすべきか
                                                 (文責:若狹)
なぜ、病院が大赤字になり、医師たちは疲れ果ててしまうのか!?―医療をつくり変える33の方法


Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年02月02日09:55

Twitter 始めました

1月30日

Twitter 始めました。主にブログの更新情報、イベントの告知などに利用していきたいと思いますので、宜しくお願いします。

ユーザー名 freedom2p
URL http://twitter.com/freedom2p
                                                (文責:若狭)






Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年01月30日16:04

【要約・第5回】 「連載21~最終回分」

1月30日

 医師の養成と増員について、既存の医学部5年生以上に、全国統一試験を課して、合格者には仮免許を支給し、現行の臨床研修制度レベルの研修を在学中に履修させることを提案します。医師の増員については、両極の議論がありますが、医師が増えることで医療の質が低下するという論旨は、こと医療分野においては当てはまらないと考えています。

 医師過剰 → 競争原理が働く=買い手(患者)市場になる → 専門医・総合医の資格(能力)を持た ない医師を患者が選ばない → 医師が資格取得のために技術向上に励む → 医療業界全体の質の向上 → 患者・国にとって有益

 一連の改革は医師個々人にとっては、経済的な面及び生活面ではこれまでより格段に改善されます。しかしながら、こと医療に関する知識や技術の習得については、これまでより積極的な姿勢が求められることになります。それは全ての医師が、診療科別専門医もしくは総合医(家庭医)の資格と能力を持つことを求められることになるからです。
 それにより恩恵をうけるのは、患者であり、ひいて国そのものです。知識や技術を身につけることは、言葉でいうほど簡単なことでないことは医師ならぬ身でも容易に想像がつきます。しかし、このような努力の求められかたは「医は仁術」を標榜する医療関係者の本懐ではないでしょうか。

 「総合医療区域」の創設にかかる費用については、本論では既存の類似施設「神戸医療産業都市構想」を例に、「総合医療区域」の創設に係る費用を仮定する事とします。中核施設の整備等に費やした投資額は、98年から09年度予算までの累計で、神戸市が約249億円、国や独立行政法人などが約1,037億円の合計約1,286億円。単純計算で、年間で約100億円程度を設備投資等の費用として、自治体経費もしくは国からの交付金・補助金等で賄っていた計算になります。
 「総合医療区域」の創設にかかる費用の財源については、国土交通省所管の公共事業費「住宅都市整備環境事業費」などの活用です。
 「住宅都市整備環境事業費」は、総額1兆6,100億円(2008年度)でその内訳は、地方の自主性・裁量性を尊重した地域住宅交付金により地域における多様な需要に対応した公的賃貸住宅の整備等を行う「住宅対策」6,548億円。地方の自主性・裁量性を尊重したまちづくり交付金により都市環境を整備する「都市環境整備事業」に9,553億円を支出しています。 

 「総合医療区域」においては、従来の規制の枠にとらわれない医療サービスに関する情報公開や国際的な人材の活用、診療科別専門医及び総合医(家庭医)の研修制度の確立、医療従事者の職場及び居住環境の整備、医療施設と医療関連産業との共同事業などが可能となります。
 このような「総合医療区域」を地方に10カ所程度配置し、それぞれが高度な医療サービスを提供する医療施設や医師の研修制度をもち、充実した生活及び職場環境を提供することで、医師がそれぞれの適性やキャリアプランを勘案して「総合医療区域」に集まってくることが期待されます。
 そして、各「総合医療区域」が医師の派遣機能を持ち、提案主体となる道府県及び隣県のプライマリ・ケアを担うことで、医師の偏在による医療格差を是正することが可能になるのではないかと考えました。2004年に新臨床医研修制度が導入されたことによって弱体化してしまった大学病院医局の医師派遣機能を、「総合医療区域」が再構築するということです。
 また、「総合医療区域」では、民間の医療関連企業との共同事業を通して地域経済の活性化を図りつつ、さらには、病院は入院、診療所は外来といった病院と診療所の機能分化と連携についても、それを実現するための具体策を本論は提示するものです。

 本論はもともと「生命の洲・日本」構想 ―いのちのしま・にっぽん― という政策の実現フェイズを時系列順に3分割した場合の最初の段階を抜き出したものです。この政策は、安全保障と社会保障という国家政策における基盤ともいうべき二つの保障を医療政策という一つの理念で統合し、日本が「世界平和」の実現に向けて具体策を示すことを最終目的とするものです。
 すなわち、本論で記載した「総合医療区域」の創設により、国内の医療格差の是正をはじめ、医療立国としての基礎を確立する。
 これをフェイズ1として、次に、国内のみならず、海外からも多くの患者・医療関係者が、治療や医学研究のために日本を訪れるという状態を作り出すことを目的とした、各種のインフラ及び法整備とその実現をフェイズ2とする。
 さらに最終段階フェイズ3として、国内での法的認識とは裏腹に諸外国からみれば軍事抑止力そのものたる自衛隊を国内警察力に転嫁し、名実ともに対外戦力(軍事力)の不保持を実現する。

 これは、国内に様々な国の患者・医療関係者が存在し、かつ世界の最先端医療を国全体で実現し、その「医力」により国際貢献をなし得る日本が、「医療抑止力」をもって国家安全保障を成り立たせ、世界に先駆け実質的な軍事力を放棄することで、軍縮と「世界相互依存」の状態を作り出し、世界平和への具体的一歩を世界に向けて示すことに他なりません。

 50年先、100年先の日本が国家として目指す理想を提示し、その理想をただ夢想するのではなく、現実のものとするために、今後とも更なる研究を進め、政策の実現可能性を高めていきたいと考えています。
                                               了(文責:若狹)


Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年01月30日09:44

【要約・第4回】 「連載16~20回分」

1月26日

 この政策で期待される副次的な効果は二つあります。それは「地域経済の活性化」と「国際貢献」です。
 「総合医療区域」の創設は、地域の経済を活性化し「総合医療区域」を擁する地方に「人・物・金」を回すことで、将来的な経済的自立を確立するものです。それは、財政的・物理的に自らの地域の実情に合わせた医療を実現することが可能となることを意味し、地域住民の医療の質ひいては生活の質の向上に繋がると考えます。
 また、特区制度を活用し、留学生や海外の医師を積極的に受け入れ、人材育成を通して世界の医療人材供給ハブを目指して、医療レベルの向上と同時に人的協力として、「総合医療区域」から災害地・紛争地に医師団・病院船等を派遣するなどの国際医療協力を行います。

 この政策では、地方であっても医師を自律的に集める魅力を持ちます。
 医師の望む医療施設(勤務先)を調査した結果、医師の希望は大別すると2つの環境の充実に集約されます。すなわち労働環境と生活環境の充実です。生活環境については、前回までの連載で記載した通りです。 労働環境については、以下の2点が重要であり、これらの点をカバーすることが、医師を集約するためのインセンティブになると考えます。

 1.専門医・認定医の資格が取得(キャリアアップ)できる
 「総合医療区域」においては、分野別専門医と、総合医(家庭医)の養成カリキュラムを設置することで、この要望に応えます。

 2.勤務医の労働条件(時間・報酬)
 「総合医療区域」には専門診療分野を持つ専門医やその資格取得希望者及び、総合医(家庭医)資格の取得希望者を中心に多くの医師が集まることが想定されます。医師が集まれば、勤務時間のシェアリングが可能となり、一人当たりの勤務時間は短縮されます。また、「総合医療区域」は経済的にも地域の自立を促進しますので、勤務者の報酬という点でも問題をクリアできます。

 しかしながら、これまで試案として記載した政策により目的の効果を得るためには、「特区・地域再生」制度を適用し、規制緩和措置を利用したとしても、構造的な限界が存在します。

 診療科別専門医、いわゆる専門医については、その認定制度が問題です。
 医師の技量の向上を考えれば、エビデンス(経験)に基づいた一定の統一基準もしくは審査機関の設立が必要不可欠です。そしてそれは、各学会ではなく国が主導で行うべきものであると考えます。

 総合医(家庭医)の養成については、総合医(家庭医)を医療制度のなかで十全に活用するためには、全医師数の半数は総合医(家庭医)である必要があるとの指摘もあります。将来的にこのような人数の総合医(家庭医)を養成するためには、国が主導していくことが必要不可欠です。
 また、総合医(家庭医)の養成にあたっては、以下のように提案します。
 既存の医師に対する認定においては、離島・へき地(医師不足地域)に基準年以上の勤務実績がある場合に総合医(家庭医)として認定する。新規に総合医(家庭医)の専門医資格を取得する場合には、養成カリキュラムを受講(要・実務試験)し、「総合医療区域」が指定する離島・へき地(医師不足地域)の医療施設での一定期間の実務経験を課し、そのうえで総合医(家庭医)として認定する。
 このように設定することで、日本全国の医師不足地域に医師を派遣することが可能となります。2004年(新医師臨床研修制度導入)以前に、大学医局が持っていた人事権を「総合医療区域」を擁する自治体が替わって掌握することで、医局制度のデメリットを排除した上で、そのメリットたる、地域医療への現実的な医師派遣機能のみを発揮することができます。
                                                 (文責:若狹)



Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年01月26日23:05

【要約・第3回】 「連載11~15回分」

1月23日

 現状を踏まえて提言する政策が、5つの機能をもつ「総合医療区域(日本版メディカルシティー)」を、近隣の2~3府県が合同で提案主体となり「特区」制度を活用し、日本国内に10カ所程度創設することです。

 1.専門医療分野(例:移植医療、小児科、産科等)と、その専門医養成カリキュラム
 2.総合医(家庭医)養成カリキュラム
 3.研究だけではなく臨床までを一括して行える中核となる医療施設
 4.職住一体をコンセプトに社会・生活インフラが整備された定住都市
 5.介護福祉施設、創薬・医療機器開発研究等の医療周辺産業を集約

 なぜ5つの機能を必要とするのか、それは、医療資源の適切配置と財源確保のためです。1~4の機能は医療資源の適切配置のために、5はその財源確保のために設定するものです。

 「総合医療区域」のイメージを説明するために、北陸地方の福井県、石川県、富山県の3県が主体となり「北陸小児医療区域」を創設したと仮定します。
 この「北陸小児医療区域」は、地域医療の中核施設として、三県とその隣県のプライマリ・ケアをカバーします。「小児医療」の専門診療分野においては、臨床・研究ともに日本で最高の医療を提供することが特色です。そして小児科専門医の養成と総合医(家庭医)の養成を行い、魅力ある都市計画と医療周辺分野の集約により活性化された地域経済は、「北陸小児医療区域」を擁する北陸地方に医療だけではなく、経済の面においても恩恵をもたらすことが期待できます。

 「総合医療区域」の創設により、医療格差の是正つまり、「医師不足問題」の根絶という主効果と、地域経済の活性化(人・物・金を地方へ)、及び国際協力への貢献(人材育成を通して世界の医療人材供給ハブへ)という二つの副次的効果を創出することが期待されます。
 特定地域における様々な規制緩和を可能とし、必要であれば資金調達等も容易に行える「特区・地域再生」制度を利用することで、現行法の改正なく迅速に医療格差の是正を図ります。
                                                (文責:若狹)


Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年01月23日17:56

日本の未来を創る「医療による安全保障」

1月20日

 大切な人の命が危機に瀕しています。有効な治療ができるのは北朝鮮の病院のみ。
 こんなことが現実に起こったら、皆さんはどうしますか? 

 金銭、法律、時間・・・・・・様々な問題があるでしょう。でも、私ならあらゆる手段を行使して北朝鮮に行きます。
 少なくない方が、同じ状況になれば私と同様の選択をするのではないでしょうか。「大切な人の命」を守りたいと願う「想い」は、とてもとても強いものです。

 ではもし、その強い「想い」の受け皿に日本がなることができたなら、「大切な人の命」を守る医療を日本が世界に提供できたなら、この国の安全保障すら、医療で成り立たせることが可能になるのです。

 唯一無二の医療、そこまではいかないとしても最高クラスの医療を、国籍・宗教・人種の差別なく提供する医療立国・日本には、世界各国から患者やその家族が集まります。
 そこに居るのは富裕層に属する人達が大半を占めることは容易に想像ができるでしょう。そしてその人達は同時に、各国で政治的決定権を持つ人、もしくはその家族や関係者、または彼らに影響力を持つ人物である可能性が非常に高いのです。
 なぜなら、現実として貧困層に属する人達は政治に対する決定権を持っていないからです。

 当然、貧困層の人達に対しては別途、国家レベルでの医療協力・支援を行う必要があります。そのためのインフラとして病院船やドクタープレインの製造・配置、法整備や人材育成等を推進する必要があります。
 これは経済政策的には単なる出費と思われがちですが、この過程で人材雇用・設備開発などの経済効果も見込め、支援を通じて日本の国際的地位の向上にもつながる、実は費用対効果の高い政策なのです。

 話を戻します。多くの国において国政に影響力を持つ人物は、本人はもちろん、一族郎党・関係者も富裕層に属していることがほとんどです。
 そのような人達が数多く滞在する日本に敵対的行為を仕掛け、医療行為の遂行を侵害することは、複数の国家を敵にまわす自殺行為であり、外交としての戦争の観点からも下策となります。これが「核(軍事)抑止力」に代わる新しい概念「医療抑止力」です。

 現状の日本は在日米軍と自衛隊の軍事力により安全保障が担保されています。現状を鑑みれば、軍備の増強や核武装すら現実的な選択肢として、少なくとも議論の俎上には載せるべきであると思います。安全保障は国の最大の義務であり責務です。万難を排して国を守らなければなりません。

 もし米軍基地を国内から撤廃したいなら、この国は独自で安全保障を成り立たせる必要があります。そのためには現在の兵力・装備を考慮すれば、十全に国を守るためには核武装も現実的な選択になるでしょう。国民の多くがその選択を望むのであれば、それもまた日本という国の目指すべき未来の一つかもしれません。

 しかしながら、その選択を選んだとしても重大な問題が存在します。軍事力による安全保障を維持するためには莫大な予算が必要です。軍事力による抑止効果を得るためには、対外脅威に比して軍備の維持もしくは増強が必ず求められます。
 今後、東アジア地域で対外脅威が治まる方向に行くことはまずありえません。であるならば、膨大な金額を軍事予算として国防費に計上する必要があります。世界的に先進国の経済が低迷している昨今、どのようにすればその予算を確保できるのでしょうか。

 この問題は、日本のみならず世界中の国々で、今後30年の間に深刻かつ重要な問題として、衆目を集めることになると予測しています。
 現在の先進国のほとんどが軍事力によって自国の安全保障を担保することが難しくなります。「軍事力に頼らない安全保障の確立」、それが30年後の世界では最も大きな政策課題となっているでしょう。
 これができなければ、行きつく先は北朝鮮の「先軍政治」です。経済事情からすれば、日本は他の国に先駆けてこの問題に直面することになるのは確実です。

 この未来を見据えて「医療による安全保障の確立」を提言し、その政策を「生命の洲・日本」(いのちのしま・にっぽん)構想と命名し、実現段階を3段階に区切り、フェィズ1として論文『医療格差の是正-「総合医療区域」の創設-』を上梓しました。
                                                 (文責:若狹)


Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年01月20日23:50

【要約・第2回】 「連載6~10回分」

1月19日

 2009年度補正予算で「地域医療再生基金」として3,100億円が計上されました。これは、救急医療の確保、地域の医師確保をはじめとした地域医療の課題を解決するために都道府県の取り組みを援助する基金ですが、実態は国が各都道府県にお金のみを渡して、具体策は各自治体に丸投げしました。
 また2009年8月30日の総選挙により、民主党が政権与党となりました。これにより、今しばらくの間は官僚機構の掌握に時間が必要とされ、医療政策をはじめ各種抜本的見直しの必要な政策の実行・実現は更なる先送りが予想されます。
 
 この点について、「構造改革特区制度(特区)」と「地域再生制度」という、国の制度を利用することで、現行法の改正なく、より迅速に対応策を実現する方策を提言します。
 特区制度は、自治体や民間事業者等の自発的な立案に基づいて、特定の地域に限定して規制の緩和・撤廃を特例として認め、その地域の構造改革を進める制度です。
 全国的な規制緩和・構造改革が困難であり、難航している現状に対して、特定地域において規制の緩和・撤廃を通して、改革の実績と経験を積むことで、将来的には全国的な構造改革へとつなげていく意図があります。そして構造改革の最終目的は「日本経済の活性化」です。
 地域再生制度は、財政支援や税制上のインセンティブを導入するなどして、地域の活性化を図る制度です。

 特区制度のなかで医療分野に関係するものとしては、神戸市が行っている「神戸医療産業都市構想」があります。
 この「神戸医療産業都市構想」は分野こそ医療特区に区分けされてはいますが、実質的には神戸市による経済活性振興策です。将来的には臨床までを視野に入れた計画ではありますが、インフラを整備して、地元の医療系ベンチャー企業の育成・起業支援や先端医療機器の開発研究等、医療周辺分野におけるビジネスを集約することで経済効果を得ることを、主な目的としています。

 医療は医師法・医療法により、通常の営利業界(会社)であれば当然許されることであっても、公共性を保持するという概念から多くの規制が存在します。それは、場合によっては患者だけではなく、日本の医療全体の損失となり得るものもあると考えます。
 例として、医療法では患者が医療機関の広告に過剰に影響を受ける恐れがあるとして、広告の許されている範囲が非常に限定されていることが挙げられます。
 また医師法では、外国人の医師が日本で診療行為を行うためには、日本の医師免許の取得が原則ですが、これは非常にハードルが高いのです。
 一例として挙げた医師法・医療法関連の問題について、最初は地域限定的にですが迅速に改善できる可能性があります。そして、経済的側面からも特区制度の活用は重要です。国の一般会計(2008年度)の歳出総額約83兆円のうち、医療費は8.5兆円と10%を占めています。この額の多少についての議論は本旨ではないので省きますが、医療において、財源ひいては経済的な問題は切っても切れないものであると思います。
 そのうえで、現状よりも医療サービスの向上を図るのであれば、一部の例外的な事情を除けば、財源となる資金の確保が必要となります。問題は、どのような方法でその資金をねん出するかです。特に地方自治体においては国からの交付金以外に、この資金を確保することは切実な問題です。
                                                (文責:若狹)


Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年01月19日16:58

【要約・第1回】 「連載1~5回分」

1月16日

 この論文は、地方で医師・病院が不足しているという、いわゆる「医師不足問題」を解決することを目的としています。
 
 では、「医師不足問題」はいつ始まったのでしょうか。2004年に導入された「新医師臨床研修制度」が引き金になって、地方の医師不足はマスコミ等に取り上げられ、多くの国民がこの問題を知ることになりました。

 「新医師臨床研修制度」とは、従来、強制力のなかった新人医師の臨床研修が義務化された制度です。 医師の研修制度は1946年以降、度々変更されましたが、「新医師臨床研修制度」の導入で、それまでの所属する大学病院以外に、一般の民間病院においても研修が可能となり、研修医は大学の医局(簡単に言うとゼミ)に属することなく自由に選択して研修を受けることができるようになりました。
 これにより、それまで研修医を労働力として常に一定数確保していた都市部の大学病院の医局は、地方・へき地の病院に派遣していた医師をその穴埋めに引き上げざるを得なくなるという事態に直面したのです。
 
 この「医師不足問題」を解決するために、「総合医療区域(日本版メディカルシティー)」を創設することを提言します。
 一つの診療科目、例えば、小児医療や産科医療、移植医療等に限定した専門医療分野と、その専門医を養成するカリキュラム。初期医療(プライマリ・ケア)を担う、総合医(家庭医)を養成するカリキュラム。臨床だけではなく研究・教育を一括して行える中核となる医療施設。定住都市としての魅力を備え、医療周辺分野(製薬・医療機器、介護・福祉)を集約できるインフラ。
 これらの機能を持った市街規模の医療施設群「総合医療区域(日本版メディカルシティー)」を日本各地に(地方に10か所程度)創設し、「医師不足問題」の根絶を含む3つの効果を創出します。

 1.医師不足問題の根絶(医師不足・偏在の解消と医療の質の向上)
 2.地域経済の活性化(人・物・金を地方へ)
 3.国際協力への貢献(人材育成を通して世界の医療人材供給ハブへ)

 現状、特に過酷な労働環境に置かれているのは、年代別では若手医師、地域別では東北地方・中国地方、診療科別では、産婦人科・小児科です。
 「医師不足問題」について、2007年4月に厚生労働省は、医師数全体は将来的に均衡する見込みであるという従来からの見方を変更しませんでしたが、現在、産科・小児科といった診療科における偏在があることは認めました。
                                                 (文責:若狹)



Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年01月16日09:37

【補講・あとがきにかえて】 

1月13日

 25回にわたり連載致しました「論文簡略版」ですが、その元になっているのは平成22年3月に筆者が修士(国際医療協力)の学位認定を受けた論文になります。そのため、使用しているデータや制度等は主に平成21年末までのものが主流を占めています。

 当然のことですが、当時とは変化している点がいくつかあります。
 特に執筆中には、個人的な構想・政策案や未来予測でしかなかったことが、現実に動き出していることを今回の連載中に頂いたコメントで知ることができたのは、大きな喜びでした。

 医療は遅行指数の最たるものですので、改善や改革などで成果を実感するには年単位が必要になることも珍しくありません。一例を挙げれば、医学部教育を抜本的に改革したとして、その成果が得られるには10年程度の時間を要します。それは新しい制度で育成された医師が一人前になるためにその時間が必要だからです。

 医療政策は常に未来を見据えなければなりません。それは場合によっては、現在の時点ではデメリットが多いと思えることでも、必要であれば取り組む決断をする勇気が求められることを意味しています。即物的な金銭の大小や対症療法的思考ではなく、根治療法を目指し、描く理想を実現するために、中長期的視野での政策立案に今後とも取り組んで参りたいと思います。
                                                (文責:若狹)

【お知らせ】
次回からは5回程度に分けて、連載した論文の要約を掲載致します。


Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年01月13日21:56

【連載・最終回】 国家100年の計

1月9日

 「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。(中略)われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」

 1946年11月3日に公布された日本国憲法前文の一節です。

 これは日本国民が国際平和という理想を実現するために全力を尽くすことを宣誓したものです。果たして現在、日本は、政府は、国民は、この「崇高な理想」を達成する意志が本当にあるのでしょうか。そして、その意志があったとしても、その理想を達成するための具体策を持っているのでしょうか。

 本論はもともと「生命の洲・日本」構想 ―いのちのしま・にっぽん― という政策の実現フェイズを時系列順に3分割した場合の最初の段階を抜き出したものです。この政策は、安全保障と社会保障という国家政策における基盤ともいうべき二つの保障を医療政策という一つの理念で統合し、日本が「世界平和」の実現に向けて具体策を示すことを最終目的とするものです。

 すなわち、本論で記載した「総合医療区域」の創設により、国内の医療格差の是正をはじめ、医療立国としての基礎を確立する。
 これをフェイズ1として、次に、国内のみならず、海外からも多くの患者・医療関係者が、治療や医学研究のために日本を訪れるという状態を作り出すことを目的とした、各種のインフラ及び法整備とその実現をフェイズ2とする。
 さらに最終段階フェイズ3として、国内での法的認識とは裏腹に諸外国からみれば軍事抑止力そのものたる自衛隊を国内警察力に転嫁し、名実ともに対外戦力(軍事力)の不保持を実現する。
 これは、国内に様々な国の患者・医療関係者が存在し、かつ世界の最先端医療を国全体で実現し、その「医力」により国際貢献をなし得る日本が、「医療抑止力」をもって国家安全保障を成り立たせ、世界に先駆け実質的な軍事力を放棄することで、軍縮と「世界相互依存」の状態を作り出し、世界平和への具体的一歩を世界に向けて示すことに他なりません。

 以上をもって日本は、憲法前文に謳われている「崇高な理想」を達成することを目指す、50年先、100年先を見据えた国家100年の計というべき政策です。

 このように本論は、この政策構想のフェイズ1に相当する部分です。今後は、政策の理念に賛同いただける方たちと共同して実務的な研究を行うべきであると考えるし、また実際に、そのような方々と協同して、内容の更なるブラッシュアップと、国会議員・官僚への政策提言や、本政策の一般への周知のためのリーフレット・書籍の出版、任意団体の設立、シンポジウム・勉強会等の準備も動き出しています。

 既存の構想とか戦略とかいわれるものは、ビジョンや理想だけを声高に語り、そこに実現に向けた具体策は全くと言って伴っていないのが現状です。
 この研究は、残された課題や検討事項が多く、現時点では実現可能性という点について疑問符が付くでしょう。しかし、長らくこの国を覆う閉塞感は、国民全体の将来に対する不安と、国が将来の国家像を示すことができていないことにその原因があると考えています。
 50年先、100年先の日本が国家として目指す理想を提示し、その理想をただ夢想するのではなく、現実のものとするために、今後とも更なる研究を進め、政策の実現可能性を高めていきたいと考えています。
                                                了(文責:若狹)


Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年01月09日19:47

【連載・第24回】 本論の特徴と限界について

1月5日

 本論では、医師の偏在による医療格差を是正するために、「特区・地域再生」制度を活用し、「総合医療区域」を創設することを提案しました。そして、それによって期待される効果と限界について述べました。

 「総合医療区域」においては、従来の規制の枠にとらわれない医療サービスに関する情報公開や国際的な人材の活用、診療科別専門医及び総合医(家庭医)の研修制度の確立、医療従事者の職場及び居住環境の整備、医療施設と医療関連産業との共同事業などが可能となります。

 このような「総合医療区域」を地方に10カ所程度配置し、それぞれが高度な医療サービスを提供する医療施設や医師の研修制度をもち、充実した生活及び職場環境を提供することで、医師がそれぞれの適性やキャリアプランを勘案して「総合医療区域」に集まってくることが期待されます。
 そして、各「総合医療区域」が医師の派遣機能を持ち、提案主体となる道府県及び隣県のプライマリ・ケアを担うことで、医師の偏在による医療格差を是正することが可能になるのではないかと考えました。
 2004年に新臨床医研修制度が導入されたことによって弱体化してしまった大学病院医局の医師派遣機能を、「総合医療区域」が再構築するということです。

 また、「総合医療区域」では、民間の医療関連企業との共同事業を通して地域経済の活性化を図りつつ、さらには、病院は入院、診療所は外来といった病院と診療所の機能分化と連携についても、それを実現するための具体策を本論は提示するものです。

 この「総合医療区域」を創設するという試案を実施するにあたり、具体的な創設場所、街区の面積、専門とする診療科目の選定、財源やその規模など、まだ不確定な部分があります。
 これらについては、まず医師が不足していて十分な医療を受けられていないと考えられる地方から一つの地域を選定し「総合医療区域」を創設します。その際、本研究では利用できませんでしたが、年齢調整をした受療率を経年的に求めるなどして、医療格差についてより客観的に把握することが必要です。
 また専門とする診療科目の選定については、その地域で、その診療科目を専門とする理由もしくはメリットが、日本の他の地域に比して存在するのか、同時にその地域に創設した場合の経済的採算性も含めて十分考慮しなければなりません。そして、そこでの経験をもとに他の候補地に適応していくことが順当であると考えます。

 本論では、医師の偏在による医療格差を是正するために「総合医療区域」の創設を取り上げました。本論では触れることはできませんでしたが、これまでも医師の偏在を解消するための試みは各都道府県や二次医療圏で行われており、これらの効果と問題点を整理することは医師偏在の解消策を検討する上で重要であると考えます。
 その他、遠隔医療の可能性、診療報酬のあり方、医師とコメディカルの役割の見直しなども医療格差を是正する上で検討すべき点であると思われます。これらは主として供給者側の課題ですが、救急医療を中心とした患者の適切な受診のあり方は、医療格差に是正のための需要者側の重要な課題です。

 今後はこれらの点もふまえつつ、「総合医療区域」の実現可能性を検討する必要があると考えています。
                                                (文責:若狹)



Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年01月05日14:58

【連載・第23回】 本政策の実行可能性に関する検討(2)

1月2日

 自治体財政について
 「総合医療区域」の運営主体となるのは自治体(都道府県)です。自治体運営の基本財源の歳入と構成比は以下の通りです。(2005年度)
 
 自主財源としては地方税35.2%、その他(使用料、諸収入)17%、依存財源としては地方譲与税1.8%、地方特例交付金1.8%、地方交付税18.9%、国庫支出金13.5%、地方債11.7%その他0.1%であり、依存財源とは国の財源保証、いわゆる国からの仕送りです。
 
 このうち国庫支出金は、特定の行政目的を達成するために自治体からの申請を基に、当該経費に充てることを条件に国から交付される予算であり、これを「総合医療区域」の創設に係る費用の財源とすることで、逼迫している地方自治体の財政状況においても「総合医療区域」を創設することが可能となります。具体的には、前回の「地方再生」制度交付金及び国土交通省所管の公共事業費がそれに該当します。

 財政面における実現可能性について
 年間に約100億円の予算を用意できれば、財政面では「総合医療区域」の実現は不可能ではないと思われます。そして、その金額は地方自治体に財政負担を強いることなく、現在支出しているベースで紹介した交付金・補助金を付け替えるだけで特別の処理を必要としません。仮定の必要予算であるので、金額の精度に問題はありますが現時点で詳細な金額を弾き出すことは非常に困難です。今後はこの点につき、少しでも精度を高めることが重要であると認識しています。

 ロジックモデルにおける検討
 ロジックモデルとは、政策がその目的を達成するに至るまでの論理的な因果関係を明示し、政策に関係する計画立案者、実施者、受益者等で意見を交換し、政策の効果を高め、改善するためのツールです。
 
 ロジックモデルに使用している用語について、「資源」とは、人的、財政的、情報・組織的な資源、及び地域の資源で、政策の実現に向けて投入するものです。「活動」とは、資源を利用して行う政策であり、ここでいう活動とはプロセス、ツール、イベント、技術、及び行動を含み、政策実施の意図的な部分であり、これにより成果を生み出すことになります。「結果」とは、政策における活動の直接の産物で、その政策で実現する現状及び、提供するサービスの内容等が含まれます。「成果」とは、ステークホルダーの行動、知識、技能、立場、及び機能レベルにおける特定の変化です。短期成果は1~5年以内、中長期成果は5~10年を想定しています。

 政策を実施してどのような成果を期待するのかを明示し、達成状況を測定する方法を探すことは、すべての関係者にとって今後の針路が明確になります。明確な指針があれば、関係者は当然自分の役割に自信を持って活発な行動ができ、針路からそれる可能性も低くなります。ロジックモデルは、特に視覚的な説明に基づいて分析が可能であるので、様々な価値観を持ち、専門の異なる多様な関係者とのコミュニケーションに役立つツールです。これを用いて、政策の理論的構造を示しました (図参照)。
 
 

 本論の目的は、ロジックモデルに記載した短期及び中長期成果の状態を作り出すことです。このロジックモデルを活用し今後とも様々な関係者と検討を行い、政策の実現可能性を高めていくことが重要であると考えています。
                                                 (文責:若狹)


Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年01月02日10:00