【要約・第1回】 「連載1~5回分」

Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~

2011年01月16日 09:37

1月16日

 この論文は、地方で医師・病院が不足しているという、いわゆる「医師不足問題」を解決することを目的としています。
 
 では、「医師不足問題」はいつ始まったのでしょうか。2004年に導入された「新医師臨床研修制度」が引き金になって、地方の医師不足はマスコミ等に取り上げられ、多くの国民がこの問題を知ることになりました。

 「新医師臨床研修制度」とは、従来、強制力のなかった新人医師の臨床研修が義務化された制度です。 医師の研修制度は1946年以降、度々変更されましたが、「新医師臨床研修制度」の導入で、それまでの所属する大学病院以外に、一般の民間病院においても研修が可能となり、研修医は大学の医局(簡単に言うとゼミ)に属することなく自由に選択して研修を受けることができるようになりました。
 これにより、それまで研修医を労働力として常に一定数確保していた都市部の大学病院の医局は、地方・へき地の病院に派遣していた医師をその穴埋めに引き上げざるを得なくなるという事態に直面したのです。
 
 この「医師不足問題」を解決するために、「総合医療区域(日本版メディカルシティー)」を創設することを提言します。
 一つの診療科目、例えば、小児医療や産科医療、移植医療等に限定した専門医療分野と、その専門医を養成するカリキュラム。初期医療(プライマリ・ケア)を担う、総合医(家庭医)を養成するカリキュラム。臨床だけではなく研究・教育を一括して行える中核となる医療施設。定住都市としての魅力を備え、医療周辺分野(製薬・医療機器、介護・福祉)を集約できるインフラ。
 これらの機能を持った市街規模の医療施設群「総合医療区域(日本版メディカルシティー)」を日本各地に(地方に10か所程度)創設し、「医師不足問題」の根絶を含む3つの効果を創出します。

 1.医師不足問題の根絶(医師不足・偏在の解消と医療の質の向上)
 2.地域経済の活性化(人・物・金を地方へ)
 3.国際協力への貢献(人材育成を通して世界の医療人材供給ハブへ)

 現状、特に過酷な労働環境に置かれているのは、年代別では若手医師、地域別では東北地方・中国地方、診療科別では、産婦人科・小児科です。
 「医師不足問題」について、2007年4月に厚生労働省は、医師数全体は将来的に均衡する見込みであるという従来からの見方を変更しませんでしたが、現在、産科・小児科といった診療科における偏在があることは認めました。
                                                 (文責:若狹)


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