フィリピンで大学病院を3つ経営するオーナー一族の一人で政府の医療政策にも関わっており、現在は自身が経営する大学・病院で国際的な看護師の育成を通して、メディカルツーリズムを実現すべく精力的に活動されている、MR.RICHARD A. MORAN(デック)氏とセブ島で大手の金物屋を経営する社長のダグラス 氏の両名とフィリピンと日本の医療の現状や、メディカルツーリズムの進行具合について情報交換をしました。
今、アジア諸国でメディカルツーリズムが注目を浴びています。特にタイ、シンガポール、フィリピンなどの東南アジア諸国は国策として、取り組んでいます。
デック氏のお話から、富裕層の外国人を対象としたこれらの病院施設のホスピタリティー、患者対応のメンタリティーは、日本のいわゆる大病院などよりも数段格上であると感じました。
各医療施設は国際基準(JCI)の認定を受け、日本のようにある意味、疾患(病気)は自己管理不行き届き(自己責任)で、それにより自由が制限されてもやむなし、というような考え方は一切していません。患者には快適な環境で身体的にも精神的にも不自由を感じることなく治療を受ける権利が存在すると患者だけではなく、医療施設の従事者も認識しており、あらゆる面でサービス業として徹底されているようです。
しかしながら、当然、肯定的な面だけが存在するわけではありません。もとより自国内で格差の大きい国々が、ただでさえ満足とはいえない限りある医療資源を、自国の貧民に提供するよりも、より費用対効果の高い外国人に提供しているのです。
これは経済用語でいうところのトリクルダウン仮説(公費を社会保障政策などで、低所得層に直接配分するのではなく、大企業や富裕層の経済活動を活性化させることによって、富が低所得層にもこぼれ落ちていき、結果的には国民全体の利益となるという考え方)に他なりません。
長い目で見れば、低所得者層も医療の恩恵に預かれる日がやってくるのかも知れません。ですが現実には、今このときにも一錠の抗生物質が得られないがために、亡くなる命が存在しています。
私たちは、将来的に日本もメディカルツーリズムを積極的に行っていくべきであると考えています。ですが、このような現実が存在することを決して忘れてはいけないのだと、改めて胸に刻みました。
(文責:若狹)