今後の政府の医療政策としては、「スーパー特区」の推進・運用による先端の医療・医薬品・医療機器等を国内外に提供することで、経済的な利益を上げること、社会保障としては、都道府県を中心にした新しい医師派遣機能の構築等を行い、医師不足の解決を図る方針であると思われます。
総務省行政評価局は、2004年から年2回、特区の利用状況の調査を行ってきましたが、2006年の12月を最後に以来行われていません。特区制度の開始から7年余り、関係省庁や地方自治体の制度的な疲労もあると思われます。
そして、これは2009年の2月に筆者の知人である自由民主党衆議院議員(当時)から伺った話ですが、「現在の特区申請は本当に小粒で、はたして特区でなければ実現不可能なものはほとんどない、数も少ないし、このままでは、この制度自体が立ち消えする」、との事でした。
このような現状も踏まえて、「スーパー特区」が創設されたのだと思います。しかしながら、運営する「健康研究推進会議」は、内閣府・文部科学省・厚生労働者・経済産業省が連携した組織ですが、調整権限しか持たず、独自の予算も付いていないあいまいな組織であり、対策の迅速性と今後の発展性は乏しいと言わざるを得ません。
また本論では、ただ単に医療分野における既存の構想にとどまりません。それは、地方経済の活性化や、国際協力の推進という国家戦略をも含むものです。このようなレベルでの「特区・地域再生」制度の利用はいまだ例がありませんが、次回以降で記述する「試案」の実現は制度上・法的にも問題はないと考えています。
都道府県は医療提供体制の確保に関する計画(医療計画)を定める必要がありますが、医療法(第三十条の四 第九項)には複数の都道府県にまたがる医療計画について記載されています。「市町村」から「スーパー特区(テーマ重視・複数拠点の研究者をネットワークで結んだ複合体)」の実施で拡大された特区の構成単位・提案主体を、さらに拡大し、2~3の府県でひとつの「医療特区」を創設・運営することは、現行法上でも可能だと考えています。
(文責:若狹)
