【連載・第13回】 試案 「総合医療区域」の概略

12月1日

 以下5つの機能をもつ市街規模の大規模医療施設群「総合医療区域」(日本版メディカルシティー)を、近隣の2~3府県が合同で「特区」制度を活用し、地方に10カ所程度創設します。将来的な道州制の施行もにらみ、各道州に一つというプランも視野に入れています。

 「総合医療区域」5つの各機能
1.専門医療分野(例:移植医療、小児科、産科等)と、その専門医養成カリキュラム
2.総合医(家庭医)養成カリキュラム
3.研究だけではなく臨床までを一括して行える中核となる医療施設
4.職住一体もしくは職住接近をコンセプトに社会・生活インフラが整備された定住都市
5.介護福祉施設、創薬・医療機器開発研究等の医療周辺産業を集約

1.専門医療分野(例:移植医療、小児科、産科等)と、その専門医養成カリキュラム
 特定の診療科に特化して、特区制度の特徴である規制緩和を最大限活用することで、これまでは不可能及び困難であった研究・臨床(未認可の新薬使用、移植、新手法の手術等)を積極的に行います。また国内外の物的・人的資源を集約することで限定医療分野においては世界最先端の研究・臨床を行い、その診療科の専門医を養成するカリキュラム(臨床・実技試験重視)を併設します。

2.総合医(家庭医)養成カリキュラム
 総合医(家庭医)とは、対象とする人の年齢、性を限らず、日常生活上罹患者の多い病気、症状、訴えを主な対象とし、あらゆる健康問題に対処する専門医です。いわゆるプライマリ・ケア(初期医療・一次医療)を担うことを期待される医師といえます。
 イギリスではGeneral Practitioner(以下、GP)とよばれ、まずGPを受診してのち、必要があれば専門医を受診するというシステムが構築されています。病院・診療所に訪れる8~9割の患者が、優秀な総合医(家庭医)がいれば対処可能とされていることから、「総合医療区域」においては、この日本版GPともいえる総合医(家庭医)を養成します。

3.臨床だけではなく研究までも一括して行える中核となる医療施設
 地域医療支援病院レベルの機能として、病床数が200床以上、他の医療機関からの紹介比率が80%以上、他の医療機関に対して高額な医療機器や病床を提供し共同利用すること、地域の医療従事者の技術向上のため生涯教育等の研修を実施できること。
 そして、24時間体制の救急医療を提供すること、専門医療分野において最先端の臨床を行うための研究設備を兼ね備え、近年、減少する臨床論文にも対応できる医療施設を中核として整備します。

4.職住一体もしくは職住接近をコンセプトに社会・生活インフラが整備された定住都市
 2タイプの「総合医療区域」(地域の実情に合わせて選択)を想定します。
 都市型(職住一体)タイプ
 医療関連施設以外にも定住都市としての社会・生活インフラ機能も揃えます。区域内に勤務する医療従事者やその家族が快適に暮らせるようなインフラを整備する。一例としては、専用のマンション、保育所・介護施設の設置は当然として、各施設には医師と看護師を配備し、子育て中の女性医師等も24時間安心して働ける体制を確保することです。
 また医療関係者や入院患者の家族等が、「総合医療区域」に移住もしくは長期滞在しても良いと思われるような生活環境を整備する目的で、日常生活の充実(通勤の利便性、娯楽施設、子供の教育環境)も図ります。
 病院型(職住近郊)タイプ
 医療関連施設以外は、近隣都市の生活インフラに依存する形で、「総合医療区域」へのアクセスが重要となるので、通勤の利便性を確保します。
 
5.介護福祉施設、創薬・医療機器開発研究等の周辺産業を集約
 医療と介護は社会的入院の問題のみならず密接な関係にあります。入院が必要な高齢者をどのように療養させるのかを含めて、医療施設に介護福祉施設を併設もしくは隣接させることは患者とその家族にとって有益です。
 また医薬品の研究開発は直接医療の質に関係するものであり、その便益は医療分野だけではなく、経済的にも大きい。これは、医療機器の開発についても同様であり、これらの医療周辺分野の施設を集約することで、得られる効用を最大限引き出すことを目的とします。
 そして、これらの産業があげた収益の一部が、「総合医療区域」内の医療施設における高度な医療の提供や研究を、財政的に側面から支援することが期待されます。

                                                (文責:若狹)
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Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2010年12月01日14:21

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