1月26日
この政策で期待される副次的な効果は二つあります。それは「地域経済の活性化」と「国際貢献」です。
「総合医療区域」の創設は、地域の経済を活性化し「総合医療区域」を擁する地方に「人・物・金」を回すことで、将来的な経済的自立を確立するものです。それは、財政的・物理的に自らの地域の実情に合わせた医療を実現することが可能となることを意味し、地域住民の医療の質ひいては生活の質の向上に繋がると考えます。
また、特区制度を活用し、留学生や海外の医師を積極的に受け入れ、人材育成を通して世界の医療人材供給ハブを目指して、医療レベルの向上と同時に人的協力として、「総合医療区域」から災害地・紛争地に医師団・病院船等を派遣するなどの国際医療協力を行います。
この政策では、地方であっても医師を自律的に集める魅力を持ちます。
医師の望む医療施設(勤務先)を調査した結果、医師の希望は大別すると2つの環境の充実に集約されます。すなわち労働環境と生活環境の充実です。生活環境については、前回までの連載で記載した通りです。 労働環境については、以下の2点が重要であり、これらの点をカバーすることが、医師を集約するためのインセンティブになると考えます。
1.専門医・認定医の資格が取得(キャリアアップ)できる
「総合医療区域」においては、分野別専門医と、総合医(家庭医)の養成カリキュラムを設置することで、この要望に応えます。
2.勤務医の労働条件(時間・報酬)
「総合医療区域」には専門診療分野を持つ専門医やその資格取得希望者及び、総合医(家庭医)資格の取得希望者を中心に多くの医師が集まることが想定されます。医師が集まれば、勤務時間のシェアリングが可能となり、一人当たりの勤務時間は短縮されます。また、「総合医療区域」は経済的にも地域の自立を促進しますので、勤務者の報酬という点でも問題をクリアできます。
しかしながら、これまで試案として記載した政策により目的の効果を得るためには、「特区・地域再生」制度を適用し、規制緩和措置を利用したとしても、構造的な限界が存在します。
診療科別専門医、いわゆる専門医については、その認定制度が問題です。
医師の技量の向上を考えれば、エビデンス(経験)に基づいた一定の統一基準もしくは審査機関の設立が必要不可欠です。そしてそれは、各学会ではなく国が主導で行うべきものであると考えます。
総合医(家庭医)の養成については、総合医(家庭医)を医療制度のなかで十全に活用するためには、全医師数の半数は総合医(家庭医)である必要があるとの指摘もあります。将来的にこのような人数の総合医(家庭医)を養成するためには、国が主導していくことが必要不可欠です。
また、総合医(家庭医)の養成にあたっては、以下のように提案します。
既存の医師に対する認定においては、離島・へき地(医師不足地域)に基準年以上の勤務実績がある場合に総合医(家庭医)として認定する。新規に総合医(家庭医)の専門医資格を取得する場合には、養成カリキュラムを受講(要・実務試験)し、「総合医療区域」が指定する離島・へき地(医師不足地域)の医療施設での一定期間の実務経験を課し、そのうえで総合医(家庭医)として認定する。
このように設定することで、日本全国の医師不足地域に医師を派遣することが可能となります。2004年(新医師臨床研修制度導入)以前に、大学医局が持っていた人事権を「総合医療区域」を擁する自治体が替わって掌握することで、医局制度のデメリットを排除した上で、そのメリットたる、地域医療への現実的な医師派遣機能のみを発揮することができます。
(文責:若狹)