【連載・最終回】 国家100年の計

1月9日

 「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。(中略)われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」

 1946年11月3日に公布された日本国憲法前文の一節です。

 これは日本国民が国際平和という理想を実現するために全力を尽くすことを宣誓したものです。果たして現在、日本は、政府は、国民は、この「崇高な理想」を達成する意志が本当にあるのでしょうか。そして、その意志があったとしても、その理想を達成するための具体策を持っているのでしょうか。

 本論はもともと「生命の洲・日本」構想 ―いのちのしま・にっぽん― という政策の実現フェイズを時系列順に3分割した場合の最初の段階を抜き出したものです。この政策は、安全保障と社会保障という国家政策における基盤ともいうべき二つの保障を医療政策という一つの理念で統合し、日本が「世界平和」の実現に向けて具体策を示すことを最終目的とするものです。

 すなわち、本論で記載した「総合医療区域」の創設により、国内の医療格差の是正をはじめ、医療立国としての基礎を確立する。
 これをフェイズ1として、次に、国内のみならず、海外からも多くの患者・医療関係者が、治療や医学研究のために日本を訪れるという状態を作り出すことを目的とした、各種のインフラ及び法整備とその実現をフェイズ2とする。
 さらに最終段階フェイズ3として、国内での法的認識とは裏腹に諸外国からみれば軍事抑止力そのものたる自衛隊を国内警察力に転嫁し、名実ともに対外戦力(軍事力)の不保持を実現する。
 これは、国内に様々な国の患者・医療関係者が存在し、かつ世界の最先端医療を国全体で実現し、その「医力」により国際貢献をなし得る日本が、「医療抑止力」をもって国家安全保障を成り立たせ、世界に先駆け実質的な軍事力を放棄することで、軍縮と「世界相互依存」の状態を作り出し、世界平和への具体的一歩を世界に向けて示すことに他なりません。

 以上をもって日本は、憲法前文に謳われている「崇高な理想」を達成することを目指す、50年先、100年先を見据えた国家100年の計というべき政策です。

 このように本論は、この政策構想のフェイズ1に相当する部分です。今後は、政策の理念に賛同いただける方たちと共同して実務的な研究を行うべきであると考えるし、また実際に、そのような方々と協同して、内容の更なるブラッシュアップと、国会議員・官僚への政策提言や、本政策の一般への周知のためのリーフレット・書籍の出版、任意団体の設立、シンポジウム・勉強会等の準備も動き出しています。

 既存の構想とか戦略とかいわれるものは、ビジョンや理想だけを声高に語り、そこに実現に向けた具体策は全くと言って伴っていないのが現状です。
 この研究は、残された課題や検討事項が多く、現時点では実現可能性という点について疑問符が付くでしょう。しかし、長らくこの国を覆う閉塞感は、国民全体の将来に対する不安と、国が将来の国家像を示すことができていないことにその原因があると考えています。
 50年先、100年先の日本が国家として目指す理想を提示し、その理想をただ夢想するのではなく、現実のものとするために、今後とも更なる研究を進め、政策の実現可能性を高めていきたいと考えています。
                                                了(文責:若狹)
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Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2011年01月09日19:47

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