【連載・第22回】 本政策の実行可能性に関する検討(1)

12月29日

 本論における政策の実現可能性について、2つの視点から検討します。一つは「総合医療区域」の創設に係る費用とその財源及び、運営主体となる自治体財政について、財政面からの検討です。二つ目はロジックモデルを用い論理的に検討を行います。

 「総合医療区域」の創設にかかる費用
 「総合医療区域」の創設にかかる費用について、正確に金額を想定することは非常に困難です。それは、各特区において必要な設備や、土地の取得やそれに伴う経費が大きく違うからである。そこで、本論では既存の類似施設「神戸医療産業都市構想」を例に、「総合医療区域」の創設に係る費用を仮定する事とします。

 「神戸医療産業都市構想」の費用について、中核施設の整備等に費やした投資額は、98年から09年度予算までの累計で、神戸市が約249億円、国や独立行政法人などが約1,037億円の合計約1,286億円。単純計算で、年間で約100億円程度を設備投資等の費用として、自治体経費もしくは国からの交付金・補助金等で賄っていた計算になります。「総合医療区域」の創設に係る費用は同様であると仮定します。

 「総合医療区域」の創設にかかる費用の財源
 将来的には、「総合医療区域」の経済的自立を目標としますが、初期投資として中核となる医療施設の建設や、定住都市としてのインフラ整備に莫大な費用が掛かると予測されます。この費用を、「総合医療区域」の設置主体となる自治体のみで賄うことは不可能です。そこで、「総合医療区域」の整備を公共事業として国から補助金を受け、財源とすることが現実的です。
 
 具体的には、連載・第7回で記述した「地域再生」制度の交付金や、国土交通省所管の公共事業費の内、地方の住宅・都市整備に係る公共事業費である、「住宅都市整備環境事業費」と、同省国土計画局が統括する「広域的地域活性化基盤整備計画及び地域自立・活性化交付金」の活用です。
 
 「住宅都市整備環境事業費」は、総額1兆6,100億円(2008年度)でその内訳は、地方の自主性・裁量性を尊重した地域住宅交付金により地域における多様な需要に対応した公的賃貸住宅の整備等を行う「住宅対策」6,548億円。地方の自主性・裁量性を尊重したまちづくり交付金により都市環境を整備する「都市環境整備事業」に9,553億円を支出しています。 

 「広域的地域活性化基盤整備計画及び地域自立・活性化交付金の交付」(2007年10月19日 国土計画局調整課)は、地域の自立・活性化に向けて、地域の発意により都道府県が作成する広域的地域活性化基盤整備計画に基づき、広域的な経済活動等を支える道路、港湾など国土交通省の所管する社会資本整備全般にわたる各種基盤整備事業(基幹事業)と地域の自由な発意による地域づくりへの支援(提案事業)等を一体的に支援する目的で交付されています。金額は20府県34地域の合計で49億9,460万円です。
                                                (文責:若狹)
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Posted by Freedom to Patients ~患者視点の医療政策を考える会~. at 2010年12月29日10:19

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